登録有形文化財・駅舎巡礼01

登録有形文化財という、文化財保護政策に基づく制度がある。これは従来の文化財を「指定」する制度に加えて、申請された文化財を「登録」していく制度を追加したもので、1996年から登録が開始されている。

文化庁ホームページより

この制度のキモは、文化財が所有者や関係団体から申請されれば、大きな問題が無い限り原則として順に登録されていくという点だ。つまりその文化財が優先的に登録される価値があるかどうかは審議されず、一定の条件を満たせばどんな文化財でも登録されてしまうという事になる。

これは、時代の流れに贖うことができず、明治以降の歴史的に価値のある建築物が次々と取り壊されていった事案を反省し、重要建造物を後世まで積極的に残していこうという狙いで作られた制度だ。だから、文化的な価値の優劣を論じるより先に、文化財と呼べるものはまず登録してしまい、いつの間にか取り壊されているという事態を回避したいという思惑が先行している。

ただ補修費用の負担が重くなり、所有者が登録有形文化財を解体してしまうという事例が後を絶たず、必ずしも制度の狙いが達成されているとは言えない状況だ。

登録有形文化財は建造物部門と芸術品部門がある。しかし、建造物を後世に残したいという狙いが最初にあったので、建造物の登録が多い。そして建造物には、鉄道関係の施設も多く登録されている。ホームや橋梁、トンネル、検査場等が登録されているが、鉄道関係で最も登録が多いのは駅舎や駅上屋の登録である。

文化庁・国指定文化財等データベースより抜粋

登録有形文化財の駅舎を順に巡ってみるのも面白いのではないかと、ふと思った。まずは地元の近畿の駅舎を巡ってみようと思い調べてみたら、近畿2府4県で14の駅舎、駅上屋が有形文化財に登録されていた。14くらいだったら、全て巡礼することも難しくない。

ただ思った通りだったが、有形文化財に登録されている駅舎には結構偏りがある。7事業者8路線の駅舎が登録されていたが、最多登録数の事業者は南海電鉄、城崎ロープウェイ、北条鉄道の3社で、それぞれ3つずつ登録されていた。南海は分かるが、城崎ロープウェイや北条鉄道の駅舎がこんなに選ばれているのはちょっと納得できない。しかしこれに文句を言っても仕方ないので、この14の駅舎を巡る旅をスタートすることにした。

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