登録有形文化財・駅舎巡礼09
新八日市駅から八日市駅まで歩き、駅前のスーパーで食事を摂る。そして八日市駅から米原行きの電車に乗り込む。
鳥居本駅は八日市から10番目の駅で、彦根駅の隣の駅だ。八日市駅を12:13に出発した電車は、13:01に鳥居本駅に到着した。
鳥居本駅は昭和6年に開業した駅で、滋賀県を拠点にして活躍した建築家ヴォーリズを意識したと思われる、洋風建築の木造駅舎だった。赤い瓦が葺かれた折れ屋根とモルタル塗りの壁が特徴的な外観だ。垢抜けしない印象の駅舎で、やはり文化財としての価値は新八日市駅の方が高いと思う。20分ほど駅舎見学をして、13:28の電車で八日市方面に折り返す。
途中高宮駅で乗り換え、多賀大社に参詣する。そして高宮駅から近江八幡行きの電車に乗り込んで、平田駅に降り立った。
平田駅はかつては湖南鉄道時代の古い木造の駅で、なかなか雰囲気のある駅舎だった。しかし平成18年に新しい鉄骨屋根の駅舎に建て替えられてしまっている。古い駅舎は切妻屋根の木造駅舎で、往時の趣きを残していた。数年前にCSの番組で近江鉄道の印象に残る駅として、鉄道ライターの横見浩彦氏が女性タレントと一緒に鳥居本駅・新八日市駅と併せて平田駅を訪問している場面が放送されていたが、横見氏は古い木造駅舎が残っていると勘違いしこの平田駅に降り立ったものだと推察している。
今の鉄骨造の平田駅は、しっかりとした構造になっている。しかし建て替え前の駅舎の切妻屋根は腐りかけていて、大きな歪みが生じていた。建て替えは仕方ないと思うが、近江鉄道の駅舎を登録有形文化財に登録しようとする機運がもう少し早ければ、平田駅旧駅舎も有形文化財に登録されて、補修・保存されていたのではないかと思う。
有形文化財に登録され、今後も保存されようとしている鳥居本駅。解体修理を前提にしていて有形文化財に登録されなかったが、地元の有志によって保存しようとする機運が見られる新八日市駅。文化財に登録される前に建て替えられてしまった平田駅。近江鉄道の3つの駅舎を訪れて、改めて登録有形文化財制度は所有者や運営者によって恣意的に活用されていると感じさせられた。
これで近畿地区の登録有形文化財14駅舎の訪問を完遂した。