カジノ・ディ・ベネチア01
ベネチアに世界最古と称されるカジノがある。これは1481年に貴族の館として建てられ、その後1638年からカジノとして運営されたべンドラミン・カレルジ宮である。そこに現在カジノ・ディ・ベネチアというカジノ施設がある。
ところがこれを世界一古いカジノと呼ぶには異論がある。というのはべンドラミン・カレルジ宮のカジノは1774年に一度閉鎖されており、1959年に再びカジノが再開されるまで185年間ベネチアにカジノが無かったという史実があるからだ。
また1774年以前のカジノも、この建物の中にあったわけではないようだ。1638年時点のカジノ創業者が所有していたカジノを総称して、べンドラミン・カレルジ宮のカジノと呼んでいたようであり、実際にはカジノは色々と場所を移しながら運営されていたようだ。
1638年当時は、サン・モイス宮殿の4階にカジノがあったと言われている。サン・モイス宮殿は現在ではホテル・サン・モイスとして使われている、歴史的建造物だ。
ベンドラミン・カレルジ宮殿自体も1960年代に大規模改修(というより新築に近い改造)が行われており、一体何が世界最古なのかよく分からない。
しかし1638年にベンドラミン・カレルジ宮を称したカジノがベネチアにあったことは事実であり、それをして現存する世界最古のカジノと言うには無理があるものの、とにかく古い歴史的背景を持つカジノと呼ぶことは問題ないだろう。
まあそういったカジノの歴史的背景もあって、少し敷居の高いカジノである可能性があると思っていた。そうすると、ドレスコードが心配だ。取り敢えず襟付きシャツにジャケット、綿パンという出で立ちでカジノへ向かう事としたが、問題は靴だ。私はスニーカーしか持っていなかった。
しかし、この時のベネチアは歴史的高潮で、街じゅう至る所で浸水していた。ならば長靴を履いて行けば、問題なく入れてもらえるのではないか。革靴じゃないと入場できないとしても、少なくとも替えの靴を用意してもらいやすいような気がする。
ということで、ベネチアの露天商で買った長靴を履いてカジノに向かうことにした。11月17日の午後6時だった。